7.3. 明反応 : 太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換
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太陽光の性質
太陽光は輻射(radiation)とよばれるエネルギーの1つの形態
電磁エネルギーは規則的な波として宇宙空間を伝わる
隣り合う2つのピークの間の距離を波長 wavelengthという
波長の非常に短いガンマ線から、波長の非常に長いラジオ波までの波長域の輻射全体は電磁スペクトル electromagnetic spectrumという
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可視光はそのスペクトルの中のごく僅かな部分
ある色素に太陽の光があたると、特定の波長(色)の可視光が吸収され、その色素によって反射される光から除かれる
葉による選択的な光の吸収は、葉が我々の眼に緑色に見える理由を説明している
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葉緑体によってほとんど吸収されない緑色の光は、見ている者にむかって反射されるかまたは透過するかのどちらか
エネルギーは消失することはないので、吸収されたエネルギーは必ず他の形のエネルギーに変換される
葉緑体は太陽光のエネルギーを化学エネルギーへの変換を駆動する色素を持っている
葉緑体の色素
葉緑体は数種類の色素を持っている
クロロフィルa chlorophyll a
おもに青色-紫色と赤色-橙色の光を吸収する
クロロフィルb chlorophyll b
おもに青色と橙色の光を吸収する
明反応に直接関わることはないが、植物が利用できる光の波長域を広げている
吸収した光エネルギーをクロロフィルaに伝え、そのエネルギーが明反応に投入される
カロテノイド
黄色-橙色の一群の色素
おもに青色-緑色の光を吸収し、それらのあるものはクロロフィルaにエネルギーを渡す
他のカルテノイドは保護の働きをする
クロロフィルを破壊する過剰な光エネルギーを吸収して散逸させる
似たカロテノイドを我々がニンジンから摂取しているが、それは我々の眼を強い光から保護している
紅葉
すべてではないにせよ、カロテノイドによって反射された黄色-橙色の光によるもの
秋の気温の低下はクロロフィル量の減少を引き起こすので、分解されないで長持ちするカロテノイドの色が透けて見えるようになる
これら葉緑体の色素はすべてチラコイド膜に埋め込まれている
これらの色素は光化学系の中の光捕集系とよばれる複合体に組織化されている
光化学系が光エネルギーを獲得する仕組み
光量子 photon
ある決まった量の光エネルギー
光の波長が短いほど、光量子のエネルギー量が多い
紫の光量子は赤色光の光量子の2倍近いエネルギーを持っている
ある色素分子が光量子を吸収すると、その色素の電子の一つがエネルギーを得る
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電子が「励起」されたという
電子が基底状態から励起状態に上った
励起状態は非常に不安定なので、励起電子は、通常ほとんどすぐに、余分なエネルギーを失って基底状態に落ちて戻る
ほとんどの色素は、光で励起された電子が基底状態に戻るとき、単に熱エネルギーを失うだけ
色素の中には、光量子を吸収した後、熱とともに光を放つものがある
グロースティックから発する蛍光は、蛍光色素の電子を励起する化学反応によって発光する
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この場合、励起電子は、蛍光という形のエネルギーを放出して、急速に基底状態に戻る
チラコイド膜には、クロロフィルが他の分子とともに組織化されて光化学系 photosystemを構成している
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光化学系にはそれぞれ、クロロフィルaとクロロフィルb、そしてカロテノイド類からなる数百の色素分子の集団が存在する
この色素分子の集団は光を集めるアンテナとして機能する
光量子が色素分子の1つに吸収されると、そのエネルギーは光化学系の反応中心 reaction centerに到達するするまで分子から分子へと移動していく
反応中心はクロロフィルaと、それに隣接する一次電子受容体 primary electron acceptorとよばれる分子からなる
一次電子受容体は光で励起された電子を反応中心のクロロフィルaから捕捉する
チラコイド膜に組み込まれた別の分子集団が、捕捉したエネルギーを使ってATPとNADPHをつくる
明反応によってATPをとNADPHがつくられる仕組み
2つのタイプの光化学系が協働して明反応を行う
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光量子は光化学系2(光量子が水を分解するタイプの光化学系)のクロロフィルの電子を励起する
そのエネルギーによって、一次電子受容体が反応中心のクロロフィルaから電子を受け取る
光化学系2は反応中心のクロロフィルaの電子を水から引き抜いた電子と置き換える
この段階は光合成でO2が発生する段階
光化学系2からの高エネルギー電子は電子伝達鎖を採って「落下していき」、光化学系1(NADPHを産生するタイプの光化学系)に到達する
葉緑体はこの電子の「落下」によって解放されるエネルギーを使ってATPを合成する
光化学系1は光で励起された電子をNADP+に渡してNADPHに還元する
チラコイド膜のどこで明反応が行われるかを示す
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2つの光化学系とそれらをつなぐ電子伝達鎖が、H2Oに由来する電子をNADP+に伝達してNADPHに還元する
明反応の過程でATPを合成する機構が、細胞呼吸でのそれと非常によく似ていることに気づいて欲しい
両方の場合とも、電子伝達によって、水素イオン(H+)が膜(細胞呼吸の場合はミトコンドリア内膜、光合成の場合はチラコイド膜)を横断して輸送される
両方の場合とも、ATP合成酵素はH+の勾配によって蓄えられたエネルギーを使ってATPを合成する
主な違い
細胞呼吸では食物が高エネルギー電子を供給するのに対し、光合成では光で励起された電子が電子伝達鎖を下りていく
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明反応が糖をつくるわけではないことに再び注意
→7.4. 科学のプロセス : 何色の光が光合成を行わせるか